デモの噂が流れた4月16日土曜日の北京。私は朝から仕事で北京を歩いていたので、一日の現状を書いてみたいと思います。
今日一日は、ある雑誌の北京旅行記事の撮影。もしかしたらこの事件で掲載中止になるのかな、と思いつつ、まだその最終決定が日本からきているわけではないので、仕事は続行、というわけです。
朝8時すぎ、家を出発。たまたま前から知り合いのタクシーの運転手でしたが「あんた、今日、デモあるの知ってる?」と聞かれ、「オレは会社からデモにいくな、っていわれたよ」となんか、普通の世間話みたい(笑)。でも、彼も日本人のお客が少なくなって困っているわけで、「私たち民間人は、争っても損するばっかり」という私の意見に「そうだよなあ」とうなずく声に実感がこもっています。
9時、天安門広場到着。「人民英雄記念碑から9時にデモ隊がでる」という噂が前日にとんでいましたが、いってみるとデモ隊はみえません。
旗をもった人の後ろに、大規模な行列がみえたので「デモっ?!」と思えば、それは広東省からやってきた団体観光客。人民英雄記念碑のまわりを警察のクルマがとり囲んでいるのがいつもと違いますが、あとはいつもどおり、ゆるい空気が流れています。警察も欠伸をしていたり、井戸端会議をしてたり、なんかゆるゆる。
たった一人、緊張感あふれる様子で、携帯電話で話している日本人ジャーナリスト風の人をみかけましたが、 その一点だけ、逆に浮いてみえたほど。
お昼の撮影のレストランでは、なじみのご主人との世間話は「北京の市街化による店の取り壊し、立ち退き」の話題などで、デモの話題は出ず。
午後は老舗のお茶屋を回り、撮影をしていると、ご主人から「今年は日本人客が少ないねえ」と話しかけられ、デモのことをゼンゼン知らないのです。教えてあげると、毎日新聞を読んでるがまったく気がつかなかった、ということで、中国のデモに関する報道の現状がみえます。
日本人客が減って、この店も売り上げが落ちており、民間経済への打撃は、日中両方に同じように及んでいます。事態が早く収集することを願い、日本のお客の来訪を待ち望む北京人も大勢いるのです。
この日は老舗のお茶屋さんの隣の茶館に飛び込みで入り、撮影をお願いして撮らせてもらいましたが、「あんたたち、日本人?日本人は礼儀正しいね」とほめられ、親切に助けてもらって感謝。
一日に接触した何人もの北京人との間では、普通に物事がすすみ、無事に終わった一日。
新聞に載るようなことは何も起きてない北京の平穏な一日を、逆にこうして記録しておきたいと思います。